ラップ道:韻の踏み方と誰でも簡単に韻のストックを作る方法

音源制作をする際、MCバトルをする際、フリースタイルをする際などラッパーであればあらゆる場面で必要となるライム(韻)。中でもMCバトルやサイファーなどの即興で行うラップ、所謂フリースタイルを行う際には、その場その場で瞬時に韻を踏む力が必要となる。それらは、もちろん即興で思いついた韻を踏んでいくのが基本のスタイルとなるのだが、全てを即興でやろうとするとどうしても踏める数やそのクオリティに制限が生まれてしまう。

そこで重要になってくるのが「韻の引き出し」だ。引き出しは端的に言うと、「韻のストック」である。この韻のストックが多ければ多いほど、フリースタイル自体のクオリティも上がることとなる。

 

ラッパーを目指す人、ラッパーとしてワンランク上を目指す人を応援する企画「ラップ道」記念すべき第一回目となる今回は、ラップをするうえで欠かせない韻の踏み方、韻のストックの増やし方について解説する。前提として、韻を踏む速さや、数は慣れによるものが大きいため、日ごろから目に入った物で韻を踏んだり、会話の中で出てきた単語で韻を踏んでみたりするといい。

※会話してる相手にもよるが、声に出して韻を踏むと周りから「ヤバい奴」だと思われるため、踏む際は心の中で踏むことをおすすめする。

言葉の構造

言葉というものは全て、「母音(ぼいん)」と「子音(しいん)」によって構成されている。

母音は「あいうえお a i u e o」のことを指し、子音は舌や歯、唇などを使って出す音で、「a i u e o」以外の全てのアルファベットが子音となる。

kとaを合わせると「か」になり、sとaを合わせると「さ」になるといった具合に、日本語は母音と子音を組み合わせること(もしくは母音単体)で、初めて言葉として発声することが可能となる。

 

韻を踏むとは?

韻を踏むということは、母音が同じ言葉を二つ以上発声することを言う。今回は当WEBマガジンのタイトル「Ninform(ニンフォーム)」を例に解説する。

※「Ninform」は日本のラッパーが自身や他の日本のラッパーを指すスラングであるNINJAと情報を発信するという意のinformを組み合わせた造語。

 

まずは「ニンフォーム」を母音と子音に分解。

 

ni n fo o mu
ふぉ お(ー、長音符)

 

※長音符(ー)は直前の母音と同じ母音となる。

 

さらに上段のアルファベットから、母音だけを抽出する。

 

i n o o u

 

※「n ん」は本来子音に分類されるが、今回はより固い韻を踏むために母音として扱う。詳しい扱いについては後述。

 

これらの抽出された母音が同じ並びで入っている言葉を探す。

 

i n ko o su
お(ー、長音符)

 

母音を抽出すると「i n o o u」となり、「ニンフォーム」と「インコース」は韻を踏んでいる言葉と言える。

 

韻を踏んでいる言葉の探し方

韻の踏み方については先の解説の通りだが、「こうすれば韻を踏んでいる言葉が見つかりますよ」という簡潔明瞭な方法はない。「ニンフォーム」であれば母音の「いんおおう」を頭に思い浮かべて、それと似た母音を持つ言葉を自信の語彙から探し出すしかないのである。つまり、ライミングスキルというものは個々の語彙力に依るものが大きい。

韻を踏んでいる言葉を探し出す簡潔明瞭な方法は存在しないと前述したが、探しやすくする方法はいくつかある。

 

言葉を分ける

「ニンフォーム」であれば、「ニン」と「フォーム」に分けるといった具合に、言葉あたりの音数を減らすことで、難易度を下げるのだ。「フォーム」だけを見て韻を踏んでいる言葉を探せと言われれば、全く韻を踏んだ経験のない読者でも割と簡単にクリアできることと思う。

仮にここであなたが思い浮かべた言葉が「ボール」だったとする。あとはボールの頭につけたときに言葉として成立する「ニン」と韻を踏んだ言葉を探せばいい。

「ピン」+「ボール」=「ピンボール」

母音を抽出すると「i n o o u」となり、しっかりと韻が踏めていることが分かる。

「ピンボール」は単語として存在する言葉だが、例えば「フォーム」と「勝負」で踏み、「ニン」と「韻」で韻を踏むことで、「韻勝負」なんていかにもMCバトルで使われそうな造語で踏むこともできる。造語で踏む際の注意点は、あからさまな造語で踏まないことである。あくまで「ありそう」、「あっても良さそう」ぐらいには違和感の無い造語でないと、「韻を踏むために無理矢理」感が出てしまう。

言葉をどこで分割するかは自由。「ニンフォ」と「ーム」に分けてもいい。その場合、「i n o」と「o u」で考えることになるが、「o u」のように「u」で終わる二文字の母音は、動詞にしやすいためかなり選択肢が増える。例えば、「取る」「呼ぶ」「飛ぶ」「揉む」「掘る」等々、「o u」と韻を踏んでいる動詞は無数にある。あとはそれらに合う「i n o」で韻を踏んでいる言葉を頭に付けるだけでいい。さらに言えば「i n o」の「o」を「を」にしてしまうのもいいだろう。後半が動詞であれば文章としてその方が自然だ。(例:金を取る)

なお、「ニンフォーム」と「ピンボール」のように長音符(ー)まで一致していれば問題ないのだが、「金を取る」のように長音符を使わない言葉で韻を踏む場合、口に出すと少し違和感がある。この違和感については次の章で解説する。

 

長音符と母音の互換性

まずは一度「ニンフォーム」と口に出してもらいたい。次に同じように「ニンフォウム」と口に出して比較してみてほしい。いかがだろうか。ほとんど違いがないのがお分かりいただけただろうか。このように一定の長音符と母音には互換性があるのだ。

先に例としてあげた、「ニンフォーム」と「韻勝負」も、実は母音に直すと「i n o o u」と「i n o u u」となり、母音だけで見ると韻が踏めているとは言えないのだが、互換性により口に出しても全く違和感がなく韻が踏めている状態となる。

互換性のある長音符と母音の組み合わせとその例は次の通り。

長音符「e」+母音「i」
例:テープとテイク

長音符「o」+母音「u」
例:ボールと豆腐

これらの互換性を覚えておけば、ぐんと選択肢の幅が広がる。

「っ」「ー」「ん」の互換性

「っ」「ー」「ん」これらは、長音符と母音の組み合わせほどではないが、ある程度の互換性がある。例えば「ニンフォーム」と「G-SHOCK(じーしょっく)」。

フォ
ショ

「ん」が「ー」に、「ー」が「っ」に変わっているのだが、さほど違和感なく発声できる。

この互換性も併用できれば、レパートリー数の底上げにつながるだろう。

 

文字数が違う言葉/母音を発音しない

例えば「ニンフォーム」と「避妊用具」。この二つは文字数から違うのだが、韻が踏めていると言える。両方の母音を抽出すると、「i n o o u」と「i i n o o u」となり、頭の「i」が余分なのが分かる。しかし、残りの母音は全て一致している。このままでもいいのだが、文字数まで一致している言葉と比べるとどうしても分かりづらい。そういった場合は余分な母音の発音を控えめにするといい。

「ひにんようぐ」と発音するのではなく、「hにんようぐ」という風に、余分な一文字については子音のみを発声する。

※「ひ」を声を出さずに言うと子音のみで発声することが出来る。

子音だけ発音すると何を言ったのか分からなくなりそうなものだが、意外と聞き取れる。足りない音は脳が補完でもしてくれるのだろうか。なお、この母音をあえて発声しない方法は言葉のどの部分にも使える。

こちらはSALUの「WALK THIS WAY」のリリック。

散々かけた迷惑 もう戻れないのさDay one

 

お聴きいただければ分かる通り、「迷惑」の「く」はほとんど発音していない。これを発音するかしないかで「Day one」と韻を踏んだ時の聴き心地が大きく変わる。どちらがいいか。言わなくたって差ならほらめいはー

ただこの手法を使うとどうしても英語の発音のような日本語になってしまう。つまり、普段からそういったスタイルのラッパーか、一曲丸まるそういった曲調の曲で使わないと「急にどうした?」と思われる可能性がある。自分のスタイルと要相談である。

ここまで母音をあえて発音しない、つまり文字数を減らすことで韻を踏む手法を解説してきたが、逆に文字数が少ない言葉に文字を付け足すのもいい。これを行ううえで便利なのが助詞だ。

 

助詞を駆使する

日本語の助詞

日本語においては、単語に付加し自立語同士の関係を表したり、対象を表したりする語句の総称。付属語。

出典:Wikipedia

俗に言う「てにをは」。この助詞の中でもとくに便利なのが一文字の助詞だ。

前章で「ニンフォーム」と「避妊用具」でも韻は踏めているが、音として分かりづらいと解説したがこの助詞を用いると、踏んでいる文字数を増やしつつ文字数を合わせることができる。

「ニンフォーム」は頭の「i」が足りないため、助詞の「に」を足す。そうすることで「にニンフォーム」と「避妊用具」となり、どちらも「i i n o o(u) u」となる。もちろん助詞を使う以上、その使った助詞に合う自然な文章を考える必要がある。

フリースタイルでありがちなのが、日本語の文法に則れば「を」が相応しい助詞である文章なのにも関わらず、韻を踏みたいがために「は」を使ってしまうこと。これまた「韻を踏むために無理矢理」感がでてしまうので注意が必要。

 

YOやAを駆使する

HIPHOPに興味のない人からすれば、ラッパーと言えば、口を開けば「YOYO」言ってるイメージがあるだろう。街行く人に「ラッパーの真似してください」なんて言えば、100人中100人が両手でフレミングの法則を作り「YOYOチェケラッチョ!!」と言うことだろう。実際にその通りで、ラッパーはYOYO言う。その使い方はマイクチェック代わりだったり、リズムの補完だったりするのだが、韻を踏む上でもこの「YO」は非常に便利。

使い方は前章の助詞と同様。「o」や「o u」の母音が足りない時に使うといい。

「YO」のほか、「A、Ay、Aye(エイ)」も韻の補完に使うことが出来る。さらに二つを組み合わせ「A yo」とすれば、「o」「o u」「e i」「e i o」「e i o u」と五つものパターンが補完に使えることとなる。これら以外にもHIPHOPのスラングの中で字数の少ないものは全て韻の補完に使えるため、覚えておくといいだろう。

使う際には、たかが「YO」とは思わず、かっこいい「YO」の言い方を練習しておくといい。また、ラッパーそれぞれ「YO」の言い方に個性があるため、聴き比べてみると面白いかもしれない。

 

完全に踏めなくてもいい

よく「韻が固い」なんて言葉を目にするが、韻の固さというのは母音がどれだけ一致しているかに比例する。韻は固ければ固いほどいいと思われがちだが、全くそんなことはない。韻が完全に踏めていなくても、踏めているように聞こえる言葉はあるし、固すぎるとダジャレ感が強くなってしまう場合もある。

こちらは韻踏合組合の「一網打尽」内のHIDADDYのバース。

 

俺らがMIC握れば一網打尽

Red EeyzいつもHIDADDY

子供だましKids on magic

何処のどれでもいつも同じ

MakeしてきたRichman Burning

バティマンおかまチチマンBullshit

ビッチのケツとチチ揉んだし

Still Rhyming Let`s mo bounce

まるで回った一郎打順

初めてだってイっちまうヴァージン

誰が聞いてもいちゃもん無し

呼んでなくてもいつもの達

俺がNo.1 Hit’s on party

解んなくても質問無し

どんな相手も一コロだし

HeadsのCocolo一網打尽

引用:韻踏合組合/一網打尽

 

16小節の全てを一網打尽で踏んでいるのだが、実はそのうち二つしか完全に踏めていない。しかし、聴いていてもさほど違和感はない。このように完全には踏めていなくても、フロウや発音の仕方次第では韻を踏めているように聞こえる言葉もある。

完全に踏めてないからと、せっかく思いついた韻を捨てるのではなく、少し工夫して踏んでいるように聞こえる発音はないか探すといいかもしれない。

子音踏み

韻を踏むということは、単語と単語の母音を合わせることだと解説した。それに加え母音だけでなく子音すらも合わせてしまうことを子音踏みと呼ぶ。MCバトルであれば漢a.k.a.GAMIやFORKなどが多用しているあれだ。

例えば「アルミ缶の上にあるミカン」。

 

ダジャレと言ったのは誰じゃ。そう。ダサい言い方をすると子音踏みはダジャレなのだ。ただ、このダジャレもかっこいい言葉でかっこよくハメるとかっこよくなる。

筆者がこの子音踏みで最も感動したのが、電波少女の1stアルバムBIOS収録の「be human」のFUNKY鬚HANKのこちらのリリック。

何週目の夜、見送る人・リアル・季節 なくなる実感
いつの間にか世界は独り歩き 切なくなる あーあ

引用:電波少女/BIOSより『be human』

なんと計12文字もの子音踏みである。長い子音踏みは通常の押韻と比べて、意味の通る文章にすることがかなり難しい。ただ、単語だけなら普通の押韻よりも簡単だ。

例えば「単語」も「丹後」「端午」など、同じ読みで意味の違う言葉がいくつか存在する。使う際には親父ギャグっぽくならないように、フロウや言葉選びに工夫したいところ。

 

裏技

韻の引き出し作りに行き詰まってしまったら、是非ツールの使用も考えてみてほしい。便利な時代になったもので、単語を入力するだけで韻を踏んでいる単語の一覧を出してくれるツールが存在する。

WEBサイトであれば韻ノートがおすすめ。同様の機能を持つアプリもあるのだが、登録されている単語数や正確性に難があるためあまりおすすめしない。

「ツール使うなんてWACKだ!」なんて怒号が聞こえてきそうだが、ボキャブラリーを増やすための辞書や本だってツールである。

 

「ボキャブラリーを増やす→ボキャブラリーの中から韻を踏んでいる言葉を探す」

「韻を踏んでいる単語を探す→見つけた単語をボキャブラリーに加える」

 

たったこれだけの違いだ。

 

おわりに

ここまで長々と韻の引き出しの増やし方を解説してきたが、引き出しの使い方には注意が必要だ。前後に何の脈絡もなく突然引き出しをお披露目したのでは、「用意してきた韻」と思われあまりいい印象を与えない。いわゆる「ネタ」である。

また、フリースタイルにおいては結局即興で思いついた韻が最も凄いということは言うまでもないし、それが出来ないラッパーではいい結果は残せないだろう。

あくまで引き出しは即興の補助であるということに留意しておいてほしい。

 

スポンサードリンク

関連記事

  1. ラップ道:「韻が固い」とは

  2. ラップ道:MCバトルにおける「ネタ」と「引き出し」の違い

  3. ラップ道:韻とリリックの関係及びリリックの書き方の基礎

  4. ラップ道:三連符・三連フロウの意味とやり方

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP