ラップ道:「韻が固い」とは

ラップが好きであれば誰もが一度は目にした、耳にしたことがあるだろう「韻が固い」という言葉。何をもって「固い」とされるのか、皆さんは正しく説明できるだろうか。

韻が固いとは

まず「韻が固い」という表現は次の2パターンの使われ方が存在する。

  • ラッパーや楽曲に対して使う「韻が固い」
  • 二つ以上の単語を比較する際に使う「韻が固い」

前者は「Kダブシャインは韻が固いよね」といった使われ方をする。これは比較的多く韻を踏むラッパーを評価するときに使われる表現であり、楽曲であればその楽曲中に踏んでいる韻の数や、韻の文字数なんかをみて使われることが多い。

前者を韻の量に対して使う表現とすれば、後者は韻の質に対して使う表現である。要するに一致している母音の数で韻が固いかそうでないかが決まる。一般的に母音を一つでも踏み外していると韻が固いという表現は使われなくなる印象だ。

のっけからダイナミック

まるでタイタニック

想像を超える大パニック

引用 : Original Rhyme Animal/Zeebra

以前の記事でライミングの参考になる楽曲として紹介した、Zeebraの「Original Rhyme Animal」から一部抜粋。

  • ダイナミック
  • タイタニック
  • 大パニック

これらの単語は全て母音が、「a i a i (ッ) u」で構成されている。全てが同じ母音で構成された単語であるため、韻の固さをランク付けするのであれば最高ランクとなる。博多ラーメンで言うところの粉落としもしくはハリガネだ。

「っ」「ん」「ー」の互換

以前の記事で「っ」「ー」「ん」の互換性について解説したが、この互換性を利用しているか否かも韻の固さに関わってくる。ここでも、「a i a i (ッ) u」を軸に解説する。

例えば、「ダイヤリング」。母音を抽出すると「a i a i (ン) u」となるのだが、ダイナミックと交互に発音してみてほしい。ほとんど違和感がないことが分かるだろうか。

さらに、「アジアリーグ」も比較してみてほしい。母音にすると「a i a i (-) u」なのだが、こちらも同様に違和感がさほどないことが分かる。「ん」「っ」「ー」は単語の中で一文字分のリズムを生んでいるのは間違いないが、逆に言えばそれだけなのだ。リズムさえ補えればいいため、同じ「ん」「っ」「ー」で代用が効く。

そして、代用して踏んだ韻はほとんど違和感がなく、最高ランクの固さと遜色がない韻と言える。博多ラーメンで言うところのバリカタである。

 

「っ」「ん」「ー」以外で代用

「a i a i (ッ) u」の「ッ」の一文字を「ん」「ー」以外で代用するとどうだろう。もっとも違和感なく補えるのは、直前の母音と同じ母音だ。

(ッ)の直前の母音「i」であるため、同じ母音で代用すると「a i a i i u」となる。

母音が「i」である五十音は、「いきしちに」の5つ。このうち「い」に関しては「ー」と同じ性質を持つ。例えば「大きい」という言葉がありますが、この言葉を実際に発音すると「大きー」となるのが一般的だろう。わざわざ「大き」と発音する人間はいない。

つまり、「a i a i (ッ) u」の「ッ」を「い」で代用するのは、「ー」で代用することと変わらない。ランクで言えば前章と同じランクとなる。

では、「いきしちに」のうち、「い」以外を用いた場合はどうだろう。

「まちあいしつ」。「ッ」を「し」で代用してみる。ダイナミックと交互に発音してみると、なかなかの違和感を覚える。博多ラーメンで言うと順番的には「硬め」に位置するのだが、ここら辺までくると「韻が固い」という評価は使われづらいように思う。意外とシビアなのだ。

直前の母音を含む文字で補うことを前提として解説してきたが、それ以外の母音を含む文字で補うとどうだろうか。

例えば「だいかいかく」。母音を抽出すると「a i a i a u」となる。「ッ」を直前の母音とは違う「か(a)」に置き換えた。

「ダイナミック」「だいかいかく」かなり違和感がある。もはや韻が踏めているのかすら怪しく思えるが、実際には踏めていないのはたったの一文字である。一文字踏めていないだけでこれだけの違和感があるのだ。

間違っても「韻が固い」などとは言えない。

 

「っ」「ん」「ー」を無視

「っ」「ん」「ー」は無視する手法もある。例えば「アニサキス」。「ダイナミック」の「ッ」を無視して踏むとこうなる。

ただし、そのまま発音してしまうと違和感が強いため、一方をもう一方の発音に寄せるといい。

究極の固さ「子音踏み」

母音全てと「っ」「ん」「ー」全てが一致する言葉が最高硬度を誇る韻だと前述したが、実はさらにその上が存在する。それが子音踏みだ。こちらは博多ラーメンで言うところの湯気通し、すなわち麺を湯気にくぐらせただけという代物。茹でてすらいないのである。

ちなみに博多ラーメンの本場博多ではバリカタですら注文する人はかなり珍しいらしく、湯気通しに至ってはもはやネタや色物といった類のものらしい。子音踏みもそうだとは言わないが、やはり一歩間違えれば親父ギャグとなる危険性を孕んでいるため、扱いが難しく、本格的な子音踏みをリリックに取り入れるラッパーは少ない。

黒ぶらないラップは黄色く 会場に繋がる扉のキーロック解除

やる気のねぇ輩は使いづれぇ 口開けば「後で、いつか、いずれ

引用:「刻韻」/妖狐

何週目の夜、見送る人・リアル・季節 なくなる実感
いつの間にか世界は独り歩き 切なくなる あーあ

引用:「be human」/電波少女

韻の硬度ランキング

SS
子音踏み

S+
一文字以上の子音踏みを含み、母音及び「ん、っ、ー」が一致

S
母音及び「ん、っ、ー」が一致

A
母音が一致し、かつ「ん、っ、ー」を「ん、っ、ー」で代用

B
母音が一致し、かつ「ん、っ、ー」をその前後の母音の文字で代用
母音が一致し、かつ「ん、っ、ー」を無視

C以下
一文字以上の母音が不一致(不一致が多ければ多いほどランクが下がる)

 

こちらが筆者作簡単な韻の硬度ランキングである。一般的にAランク以上が「韻が固い」という評価を受けている印象だ。

細かく分類してはいるものの、結局のところ重要になるのは「違和感」である。違和感が強ければ強いほど「韻が固い」という評価からかけ離れていく。そして、その違和感も発音の工夫次第では解消されるため、ランキングはあくまで一つの目安であるということに留意してほしい。

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